《戦術本》「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論
『フットボールにとっての正義とはなにか?私にとってはボールプレーである。いかにしてボールを走らせ、時間と空間の制限の中で最高のタイミングを見いだせるか。その感覚は私にとって、ボールがネットを揺らしたか、よりも大事な定義である。』 ―――ヘスス・スアレス
著者:ヘスス・スアレス/小宮良之
著者は、プロプレイヤーとしての経験もあり、スペインサッカーに精通しているヘスス・スアレス氏。彼が、選手や監督、戦術について鋭く切り込んだのが、今回紹介する一冊です。
私はこの人をよく知らないのですが、本の内容から察するに相当に毒舌な人柄のようです。この本のサブタイトルになで斬り論とありますが、スペインサッカーに関係する人を片っ端から切り倒していく内容となっています。読んでいてとても爽快です。
たとえば、モウリーニョの守備ブロックを引いて罠を張ったような戦術を、しみったれたフットボールと批判したり、2010年の南アフリカワールドカップで監督としてスペインを優勝に導いたデルボスケを、前監督のアラゴネスの遺産を引き継いだだけと評してみたりとかなり厳しい論調です。
ですがその一方で、良いと評価する人物に対しては、手放しで称賛を行ないます。イニエスタに関しては、CHAPTER一つを丸々使って彼のプレーがどのようにすごいのかの考察が書かれています。このヘスス・スアレスという人は、何事にも批判の目を向けるというよりも、とても正直な人物なのでしょう。サッカーの見方がとても参考になります。
そんな彼が行なう選手評価は一見の価値があります。CHAPTER9の選手評価の固定概念を覆せ!では、ポジションごとに選手の評価基準が記されています。正直な意見が、サッカー観戦に新たな視点を提示してくれますし、現在プレーする選手の中で誰が彼の厳しい基準を満たすのかについても、選手の名前を出して解説していますので読みやすいです。スペインに精通した方が書かれているので、登場する選手が若干リーガエスパニョーラ経験者に偏っているのが気になるところですが、有名な選手が多数紹介されていますので大きな問題はないかと思われます。
スペインサッカーを見るうえで欠かせないエッセンスが詰まった一冊といえます。リーガエスパニョーラが好きな方はぜひ読んでいただければと思います。
「戦術」への挑戦状 [ ヘスス・スアレス ] |
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